昭和の時代 2020 9 19

 コロナ禍によって、給料やボーナスが減って、
多くの人が途方に暮れているかもしれません。
「節約をしなくては」と思っているでしょう。
 しかし、昭和の時代の人から見れば、
今の時代の人は、贅沢をしている、
つまり、「背伸び消費」をしていると見えるでしょう。
 私が大学生の頃は、車の免許を取ったら、
「いつかはクラウン」と言われていました。
 つまり、立身出世をして、
クラウンのような「3ナンバー」の高級車に乗りたいという意味です。
 しかし、たいていの人は、免許を取ったら、
中古車から始めたものです。
 私の場合は、父親と共有するということで、
当時の大衆車でありますが、
トヨタ・カローラの新車に乗ることができました。
私は、「ずいぶん金持ちになったもんだ」と思いました。
 しかし、やはり、無理がありました。
新車購入時には、購入資金が不足して、
カーエアコンをつけることができませんでした。
 そこで、車の中には、「うちわ」がおいてありました。
夏、信号で止まると、車内は、猛烈に暑いのです。
窓を開けていても、大粒の汗が出ました。
 車に乗る時は、
汗をかいても平気な恰好で乗るというのが、
我が家のルールでした。
 さて、コロナ禍によって、給料やボーナスが減ったので、
みんな「昭和の時代に戻ろう」となると、
つまり、「車は中古車にしよう」となると、
日本経済が大変なことになります。
 今の日本において、自動車産業は、基幹産業になっています。
部品産業まで含めると、相当な就業者数となります。
 このような状況で、多くの人が、
背伸び消費をやめて、中古車志向になってしまうと、
自動車産業は、大きな打撃を受けてしまいます。
 私が若者の頃は、友人たちが、
「10万円で中古車を買ったぞ」、
「いや、贅沢だ。7万円の掘り出し物があった」という会話をしていました。
ウイスキーではありませんが、20年物の車でした。
 ある意味、車の古さ自慢をしているようなものでしたが、
後部座席に乗った時は、時々、後ろを見て、
走りながら部品を落としてないか不安になったものです。
 もう一つ、昭和の時代の話を書きましょう。
私が若者の頃は、旅行と言えば、各駅停車でした。
 しかし、ある時、親から過分の資金をもらって、
「特別急行電車」、つまり「特急」に乗ることができました。
その時は、「これが最初で最後になるかもしれない」、
「ずっと特急に乗っていたい。時間よ、止まれ」と思ったものでした。
母は、必死で貯めた「へそくり」を息子の旅行資金に使ったのです。
 当時の宿といえば、「ユースホステル」が主流でした。
少し、資金に余裕がある人は、「民宿」に泊まりました。
「ホテル」は、金持ち向けの施設でした。
 いつからか、「ユースホステル」には閑古鳥が鳴き、
次に、「民宿」にも閑古鳥が鳴くようになりました。
みんな「背伸び消費」をするようになったからです。
 さて、みんな「ユースホステル」に戻るか。
しかし、そうなると、日本経済が大変なことになります。
 今、日本においては、サービス産業が大きな産業となっていますので、
無理をしてでも、みんなに「背伸び消費」をしてもらう必要があります。
 もちろん、「ユースホステル」には、長所がありました。
このような「格安宿泊施設」では、相部屋どころか、
10畳の和室に5人が「雑魚寝」という状態でした。
 赤の他人が「雑魚寝」でも楽しかったです。
若者は夢を語り、中高年は苦労話を語りました。
 今でも、私にとっては、大切な思い出です。
時々、タイムマシンで、あの時に戻りたいと思います。
 コーヒーよりもジュースが好きだった私に、
苦みや香りを教えてくれた人たちに感謝をしたいのです。
 もしかすると、「本当の豊かさ」が問われる時代になるかもしれません。
20年物の車やユースホステルが主流になってしまうと、
日本の経済規模は、半分以下になってしまうかもしれませんが、
たとえ豊かになっても、失ったものが大きく、
たとえ貧しくても、豊かだったかもしれません。
 あれから、日本は、ひたすら物質的な豊かさを求めてきましたが、
精神的な豊かさを捨ててしまったかもしれません。
 「若者よ、コーヒーを教えたのは、人生にも苦みがある。
山あり、谷ありだ。
それでも負けることなく、進め」ということだったかもしれません。
 私は勘違いして、コーヒーの銘柄で、
マンデリンがよいとか、コロンビアがよいとか、
物質的な豊かさを求める方向に行ってしまいました。
 人生の先輩たちは、あの世で笑っているかもしれません。
「もう一度、精神的な豊かさとは何か、一から教えなければならない」






























































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